本日、生活改善諸活動についての論文の書評を大学の講義を使わせていただいて発表してみました。今までに何度か生活改善諸活動の研究史をまとめる中で、使っていた論文だったので、それほど苦労せずに淡々と発表することができましたが、やはり生活改善諸活動に対する研究の民俗学からの風当たりは強いものですと実感しました。と言いますのも今回取り上げた田中宣一氏「生活改善諸活動と民俗の変容」「生活改善諸活動と民俗―「官」の論理と「民」の論理―」の二つの論文はそれぞれ構成や考え方が違うのですが、いずれの研究も「民俗の変容」がキーとしてあり、民俗学研究への位置づけはそこからが出発点となっているようです。しかしながら、これらの論は、そうした民俗の変容を追う一方で生活改善諸活動そのものの動きや理念に偏り、一見生活改善の説明書のように見えないこともありません。田中氏はこれらの論の中で言いたいのは、生活改善諸活動という「官」の動きに対し、伝承生活の場である「民」のそれらへの受容はどうであったのかを深く考える必要性があるということです。つまり民俗の変容があってこその手段として生活改善諸活動を用いているという感じです。
こうした、生活改善諸活動の研究に対しての田中氏の提言はおおよそのところ、今後出てくるであろう私のような生活改善を研究する研究者に対し、生活改善諸活動研究の必要性と、民俗の変容を考えることの大切さを告げるものでした。正直なところ、この想いについては理解できるのですが、私としては物足りない感がいっぱいな論文でした。
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